Search

3年ぶり開催!西宮神社「福男選び」 一番福は神戸出身の22歳大学生 - 神戸新聞NEXT

 えべっさんの総本社・西宮神社(兵庫県西宮市)で10日早朝、参拝一番乗りを目指して境内の230メートルを駆ける「福男選び」があった。新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止が続いたため、3年ぶりの開催。約5千人の中から神戸市北区出身の大阪商業大学4年の植本亮太さん(22)=大阪府東大阪市=が「一番福」を手にし、えびす顔で参拝者らに祝福された。福男とは、つかんだ1年の福を分け与える人だ。江戸時代からの変遷を踏まえて、その栄誉を伝える。

■運つかみ、難所も次々クリア

 福男選びは「十日えびす」の伝統行事。前日の9日夜から西宮神社に長蛇の列ができ、先着1200人の中からくじ引きで「前列組」の約260人が決まった。福男になるには、こうした運を持ち合わせることも欠かせない。

 夜明け前の10日午前6時、朱色の表大門が「かいもーん」のかけ声で開かれると、待ち構えていた参加者が本殿を目がけ、一斉に境内へなだれ込んだ。

 植本さんは最初の直線50メートルで先頭に立ち、難所とされる右130度の通称「てんびんカーブ」を独走状態で抜けると、石畳が続く直線100メートルの「福男道」でさらに加速。左110度のカーブを経て道中に立ちはだかるクスノキも難なくかわし、右直角の「魔物の角」を曲がりきって本殿に駆け込むと、神職に抱え込まれた=境内略図を参考。

 植本さんは50メートル走で5・9秒の記録を持つといい、今回が初挑戦。硬式野球で内野手をしているという。「運が良くてこの場に立っていられる。皆さんに福を分け与えられるようになりたい」と笑顔を見せた。

 二番福は、西宮市の公務員北野壱真さん(25)、三番福は大阪府岸和田市の大阪経済大学1年の田中大翔さん(19)だった。

 一方、本紙の新人記者も挑戦し、最前列を引き当てる強運ぶりを見せたが、途中で転倒もして福男には入らなかった。

■室町期からの神事が原点

 福男選びの起源は定かではないが、本質的には神事でなく、庶民の文化から生まれた「走り参り」が発展したといわれる。

 大元には、室町時代から受け継ぐ厳粛な神事「忌籠(いごもり)」がある。西宮神社は10日午前0時になると全ての門を閉じ、静寂に包まれた境内で神職は身を清め、起きたまま時を過ごす。この間にえびす神が馬に乗って地域を巡るという伝承があり、夜明けの午前6時を待って太鼓の音とともに表大門を開くのが「開門神事」だ。

 地元の人々にとっても、この日の未明はえびす神を気遣って静かに過ごし、夜明けの開門を待ってから、お参りするのが習わしだった。それが江戸時代には信仰深い人々の間で、自宅から参拝を急ぐ「走り参り」が始まり、自然発生的に競走につながっていったとみられる。

■記録上3度目の中止を経て

 走り参りは近代になって急速に行事化した。

 1905(明治38)年に阪神電鉄西宮駅が開業して遠方からの参拝者が増え、新聞やテレビの影響もあって挑戦者が急増すると、40(昭和15)年ごろから福男の認定が始まった。

 平成に入ると開門時に5千人以上があふれ返り、福男争奪戦は年々過熱する。2004年には1人を勝たせるためにチームを組んだ複数人で他の人を妨害する不正などがあり、05年からは前列の場所取りに抽選制が取り入れられた。

 この間、記録に残る中止は3度だけだ。1度目は、空襲被害の影響を受けた1946~52年。2度目は、全国の祭礼行事で死者が続出して警察から指導を受けた66、67年。阪神・淡路大震災から1年後の96年にも途絶えなかったが、3度目が2021年と22年のコロナ禍となった。

 一昨年と昨年は福男選びを中止する代わりに本殿まで歩いて参拝する形式とし、それぞれ約500人が参加した。

 3年ぶりの開催となる今回は密集緩和のため、抽選の参加者を例年より300人少ない先着1200人とし、先着5千人に向けた開門神事参拝証の配布は再開した。

 福男選びを運営する「開門神事講社」の講長平尾亮さん(46)は「福男はもちろん素晴らしいが、一番じゃなくても、1年の始まりにお参りして、1年の福を授かる。それが開門神事の本質なのだと知ってほしい」とし、無事に終わると「3年間待ち続けて無事に開くことができて本当にうれしい」と喜びを隠すことなく、むせび泣いた。

【メモ】

 西宮神社のえびす信仰は、海から上がった木や死体などの漂着物を「えびす」と呼んで海の安全を祈ったのが起源とされ、祭神は淡路島から流された「国生み神話」のイザナギとイザナミの子と伝わる。

 えびすは時代を経て「漁業の神」「商売の神」などの意味付けが加わり、西宮神社付近に住んだ人形遣いの「傀儡師(くぐつし)」が全国を巡回して信仰を広めた。

 ちなみに「西宮」の地名は、北東約2キロ先にある「広田神社」が「京の西方にある宮(神社)」と呼ばれたのが由来とされる。なぜえびす総本社が「西宮神社」になったかについては、江戸時代に庶民の間でえびす信仰が広まり「西宮にあるえべっさんを祭る神社」という意味で「西宮」を「えびす」と読むようになったとの説がある。

Adblock test (Why?)



from 日本 - 最新 - Google ニュース https://ift.tt/2RJwHIg
via IFTTT

Bagikan Berita Ini

Related Posts :

0 Response to "3年ぶり開催!西宮神社「福男選び」 一番福は神戸出身の22歳大学生 - 神戸新聞NEXT"

Post a Comment

Powered by Blogger.