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捜査「捏造」訴訟判決 なぜ冤罪へ突き進んだか - 中国新聞デジタル

 警察と検察による捜査の違法性を、機械メーカー社長らが訴えていた国家賠償訴訟で東京地裁はきのう、警視庁公安部の逮捕や東京地検の起訴をいずれも違法と判断し、東京都と国に合わせて約16千万円の賠償を命じた。

 現役捜査員が法廷で捜査の違法性を証言するなど、審理は異例の展開を見せていた。判決が、警視庁や東京地検のずさんさを断じたのは当然だろう。

 無理のある捜査を進め、止められなかったのはなぜか。組織構造に巣くう問題点など背景を検証する必要がある。

 逮捕された一人は勾留中に体調を崩し、がんで亡くなった。保釈請求をしても裁判所に退けられている。冤罪(えんざい)で無実の人を死に至らしめたと言っても過言ではあるまい。関係者は真摯(しんし)に謝罪し、償わねばならない。

 国家賠償訴訟を起こしていたのは、横浜市の化学機械メーカー「大川原化工機」の社長や遺族らだ。

 社長ら3人は2020年、軍事転用が可能な噴霧乾燥装置を中国などに不正輸出したとして外為法違反の疑いで逮捕、起訴された。だが3人は、装置が生物兵器に転用できないことを説明し、一貫して無実を主張していた。

 その後、犯罪に当たるかどうか疑義が生じたとして、東京地検は21年7月、初公判直前に起訴を取り消した。東京地裁は社長らに対し、1年近くに及んだ身柄拘束への刑事補償の支払いを既に決定している。

 今回の国家賠償訴訟では、驚きの証言が飛び出した。

 捜査を担当した警視庁公安部の警部補が、証人尋問で原告側代理人に「事件はでっち上げと思うか」と聞かれると「捏造(ねつぞう)です」と答えたのだ。社長らを逮捕した後、捜査の問題点を指摘する内部通報があったとも明かしている。

 この証言を都は「具体的な根拠はない」と否定したものの、別の警部補が「(捜査幹部は)マイナスな証拠を取り上げない姿勢があった」と述べている。

 装置は霧状の液体に熱風を当てて粉末化するもの。外為法の規制対象となる「滅菌または殺菌できるもの」に該当するかがポイントだった。

 しかし警視庁や地検の怠慢ともいえる点を、裁判長は指摘している。「聴取結果に基づき、通常求められる捜査をしていれば装置が輸出規制の要件を満たさないとの証拠を得られた」「必要な捜査を尽くすことなく起訴した」と。

 見立てや構図に固執し、現場に消極的な意見や異論があっても受け入れない姿勢がうかがえる。本当に犯罪行為なのかという肝心な部分を詰めず、根拠が欠如したまま独自の論理で逮捕、起訴へ突き進んだ。許されることではない。

 逮捕者の一人から調書修正を依頼されながら、捜査員が修正したふりをして署名させたことも認定、違法と指弾されている。

 違法な捜査や立件ありきの決めつけによって冤罪を生む―。その恐ろしい人権侵害を自覚し、警察や検察は意識や手法を改めねばならない。

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