3月1日昼すぎ、埼玉県戸田市の中学校で、教員が刃物で切りつけられてけがをし、17歳の男子高校生が殺人未遂の疑いで逮捕されました。
調べに対し「誰でもいいから人を殺したいと思った」などと供述しているということです。
また、隣接するさいたま市で先月、猫の死骸が相次いで見つかった事件への関与もほのめかしているということで、警察は関連についても調べています。
警察などによりますと、3月1日午後0時半ごろ、戸田市の市立美笹中学校に刃物を持った若い男が侵入し、当時、試験が行われていた教室に入ろうとしました。
その様子に気付いた60歳の男性教員が、中学生を避難させて近づかないようにしたうえ、ほかの教員とともに取り押さえたということです。
中学生は避難して無事でしたが、取り押さえようとした際に、60歳の男性教員が上半身を複数回切りつけられてけがをしました。
意識はあるということです。
取り押さえられたのは、さいたま市浦和区に住む17歳の男子高校生で、警察は殺人未遂の疑いで逮捕しました。
調べに対し「切りつけたことは間違いない。誰でもいいから人を殺したいと思った」などと供述しているということで、警察が詳しい状況を調べています。
また、隣接するさいたま市では先月、切断された猫の死骸が相次いで発見されていましたが、これらについても関与をほのめかしているということで、警察は関連についても調べています。
※警察は逮捕した17歳の男子高校生の住所について、当初、さいたま市南区と発表していましたが、さいたま市浦和区に訂正すると発表しました。
事件当時 中学校内では試験 確保の状況は
試験に立ち会っていた60歳の男性教員が、3階の教室に入ってきた男子高校生に気付いたということです。
男性教員は、中学生に教室の前に避難するように指示したうえで、近づかないように男子高校生を制止しました。
60歳の男性教員はこの際に、上半身を複数回切りつけられてけがをしましたが、意識はあるということです。
警察が現場に到着し、高校生は殺人未遂の疑いで逮捕されました。
現場では犯行に使われたとみられるナイフが押収されたということです。
生徒たちは避難していたため無事でした。
その後、集団下校する様子も見られました。
生徒「非常階段を使って校庭に避難した」
また、避難した際には黒い服を着た容疑者が、廊下で複数の教師に押さえつけられていた様子を見たということです。
生徒の1人は「警察に連行されている時は慌てるようすもなく、普通に歩いていました。こういうことは、めったにないのでびっくりしました」と話していました。
事件現場の中学校は
周辺には、事業所や住宅などが建ち並ぶ地域です。
中学校で、午後1時すぎに撮影された映像では、学校の駐車場に警察の車両など多くの車が止められ、大勢の警察官が駆けつけていました。
また、学校の校庭に避難していたとみられる生徒などに警察官が話を聞いている様子も確認できました。
その後、生徒たちは教職員の指示にしたがい、別の場所に移動していました。
生徒の親「『爆破予告』メール 怖いねと話していた」
中学校に2年生の子どもが通っているという母親は「県内の学校には『爆破予告』などのメールが毎週のように来ていたと聞いていたので、友達とは怖いねと話していました。市内の学校にも危害を加えるという話がありましたが口だけで何もしてこないだろう、大丈夫じゃないかと思っていたら事件が起きたので怖いです」と話していました。
近くに住む人「学校の3階の廊下の様子見た」
また「その後、教員が廊下をバタバタと走ったり、教員を先頭に生徒が移動したりするのを見ました。正午ごろ、子どもと家に帰ってきたのですが、少し遅れたら犯人と鉢合わせていたかもしれないと考えると怖いです」と話していました。
近くの会社の人「生徒の声などは聞こえず」
中学校の近くにある金属加工会社の事務員の女性は、「午後0時半すぎごろだったと思いますが、大きなサイレンの音がして、近くで止まったので、外を見ると、学校の横でパトカーが3台止まっていました。何か事件が起きたのかと思いました。生徒の声などは聞こえず、様子はわかりませんでした。このあたりでは、このような事件は初めてです。最近、埼玉県内でも物騒な事件が起きているので心配です」と話していました。
周辺で猫の死骸が相次いで見つかる
さいたま市南区の荒川沿いでは、2月13日と16日、公園で切断された猫の足や胴体などが見つかり、17日には1キロほど東の小学校の校庭で頭の一部も見つかりました。
公園と今回事件があった中学校は2.5キロほどしか離れていません。
さらに、2月26日には小学校から北西に4キロ余り離れた桜区で別の猫の死骸が見つかっていました。
一連の事件について、警察は何者かが猫を切断して放置したとみて、動物愛護法違反の疑いで捜査しています。
そのほか、2月20日にはさいたま市南区の小学校や周辺施設を爆破し、子どもに危害を加えることを予告する文書が届いたということです。
これまでの学校への侵入事件
2001年には、大阪 池田市の大阪教育大学附属池田小学校に刃物を持った男が押し入り、児童8人が殺害されたほか、教員を含む15人がけがをしました。
2年後の2003年には、京都府宇治市の小学校に包丁を持った男が侵入し、児童2人がけがをしました。
さらに、2018年6月には、静岡県藤枝市の小学校近くの路上で、18歳の少年が下校中の男子児童を刃物のようなもので切りつけて、大けがをさせたうえ、学校の敷地に侵入したほか、去年10月には、埼玉県日高市の中学校に竹刀のようなものを持った男が侵入し、生徒3人が頭などをたたかれてけがをしています。
学校の不審者侵入対策は
2001年に大阪の大阪教育大学附属池田小学校に刃物を持った男が侵入し、8人の児童が殺害されるなどした事件を受け、各地の学校では不審者の侵入に備えた独自の対策が広がりました。
教職員や警備員によるパトロールのほか、校舎の周囲が見渡せるように職員室の窓ガラスを不透明なものから透明なものにする学校も出てきました。
事件の翌年、文部科学省は「危機管理マニュアル」を作成し、登下校のとき以外は出入り口を施錠したり受付を設けて来校者をチェックしたりすることや、インターホンや防犯カメラの設置、それに不審者の侵入を想定した訓練などの対策を示しました。
その後も学校への侵入や登下校中の児童や生徒をねらった事件が相次ぎ、マニュアルの見直しが重ねられてきました。
文部科学省の2018年の調査によりますと
▽出入り口の施錠や受付での確認など不審者の侵入を防ぐ取り組みをしている学校は97.3%
▽インターホンを設置している学校が63.5%
▽防犯カメラを設置している学校が58.1%
▽侵入者を取り押さえるためのさすまたを用意している学校が88.2%でした。
犯罪心理学の専門家「少年の生育歴など把握し対応考える必要」
そのうえで「もし、今回、人を切りつけた少年が同じ人物だとすると、人格障害である可能性が考えられ、今後、少年の生育歴や交友関係などを把握し、正確な診断のもとに対応を考える必要がある」と指摘しました。
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